ガラス作家 田中加奈子の制作日記

作品制作にまつわるエトセトラ

(オーダー制作)自分に還る時間を照らすランプ・前編

 

こんにちは(^O^)

 

ガラス作家の田中加奈子です!

 

「自分に還る時間を照らすランプ」というオーダーで制作したテーブルランプについて書きたいと思います。

 

オーダーの依頼をくださった時に一緒に、その方の感じる心象風景を文章で送ってくれて、それを読んだ私は、彼女の綴る言葉の美しさに胸をドキドキさせながら、かつて自分もその風景を見たことがあるような不思議な気持ちになりました。

 

過去の私の作品から、好みのものをいくつかコラージュした画像を送ってもらったのですが、それらを見てなるほどなと。

 

光と影、反射、映り込みを意識した作品たちで、手で触れられる「モノ」としての美しさより、現象の美しさを取り入れた作品を選ばれていました。

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 私がガラスという素材に惹かれているのは、その時々で見え方が変化する、現象の美しさを含めた作品制作ができるからです。

 

オーダーくださった方が、その美を感じとってくれる方だとわかり、私の感じる美しさを全力で表現したいと思いました。

 

1番最初に取り掛かったのは、「ハープを聴くこと」。依頼者の方が少し前に念願のハープをはじめられていて、まずはその音を聴くことに。

 

生で聴くことは叶わなかったのですが、ハープで演奏された音楽を流しながら、設置予定のお部屋の写真を眺めたり、ストレッチをしたり、洗濯ものを畳んだり、、、

 

恥ずかしながら、これがハープの音だと意識して聴いたのは初めてでした(*ノωノ)

 

ここで軽く衝撃が。

 

音と音が滑らかつながって音楽となっていくのを想像していたのですが、全く違うもので大変驚きました。

 

私が感じたハープの音は、一音一音しっかりが独立したもののように感じました。それが小さな玉となり、次々に生まれては上へと昇っていく。やがて雨や雪のように降り、自分の周りに小さな光の粒となって積もっていくようでした。

 

この風景の中にオーダーくださった方がいるところを想像してみました。その方が奏でるハープから小さな玉が生まれ上昇していく、降ってきた光に照らされて、照らされるものの純度が増していく。

 

その循環が繰り返されることで、本来の自分へと還っていく、、、

 

 

 

自分に還る時間を照らすランプのイメージがかたまりました。

 

 

 

 

さて、ここからは実際に手を動かすところの制作過程です!

 

 

今回は飾る場所が決まっているので、その場所に合わせたランプのサイズを、依頼者さんと相談しながら決めました。

 

つくろうとしているイメージと、お部屋の雰囲気、希望のサイズに合わせたランプシェードを探したところ、こちらのアンティーク調のランプシェードを選びました。

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線状の模様と足があるのがお気に入り。

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あまりに気に入ったので自分用に同じものを(〃ω〃)

 

このベースに合わせてシェードの大きさを決めるのですが、ほんと微妙な差で急にヤボったくなったりするので、実物大で模型を作り、丁寧に確認します。

 

ほぼ同じに見える↓の二つも微妙にサイズが違います。最初に作った模型より5mmほど小さくしたらバランスが良くなりました。

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次に、使うガラスの選定と加工です。

 

 

シンプルなカタチのランプシェードですが、使うガラスはかなり手を加えて作りました。

 

まずは、メインになるガラスにはこちらの気泡と表面のヨレ感が美しいアンティークガラスをつかうことに。

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※ステンドグラスで使うアンティークガラスとは、古いガラスのことではなく、昔ながらの製法で作られたガラスのことを指します。職人さんが手作りしたもので、高価ではありますが、均一ではない味わい深い美しいガラスです。

 

このままでも充分に美しいガラスなのですが、ランプシェードにするには透明すぎて光がダイレクトに目に入り、かなり眩しいです。それに、もっとガラス自体に光が溜まるようなイメージだったので、近づけるように手を加えていきます。

 

サンドブラストでガラスの表面に細かいキズをつけて、曇りガラスにしていきます。曇りガラスは、表面の細かいキズによって光が乱反射し白く曇ったように見えます。それがをランプにするとガラス自体に淡く光が溜まるようで美しいのです。

 

サンドブラストとは、細かい砂をコンプレッサーで圧縮した空気とともに勢いよく吹きかけて対象物を研磨する加工法です。

 

先から砂と空気が出てくるペン型の機械を持って作業します。

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白っぽく曇ったガラスになりました。

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ここから更にペンルーターでガラスに模様をいれます。表面、裏面ともにストライプ状の細い糸のような模様を彫ります。

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ルーターの写真がなかったのでこれは使い回しです、、

 

模様を彫ったもの

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表面、裏面ともに彫ることで、がラスに奥行きが出てきます。

 

動画でみると、、、、


ランプシェードに使うガラスを加工しました

  

 

次にアクセントパーツをつくるのですが、これはガラスを電気炉で焼成してつくりました。

 

透明なガラスに粉状のガラスを乗せて、まずは一度焼成し、ベースになるガラスをつくります

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この時の写真も撮り忘れてたので、同様の作業をしている写真の使い回しです、、、 

 

 

焼けたものをバキバキに砕いて、

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砕いたものと、粒状の色ガラスと合わせて、

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再度、電気炉で焼成します
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そんなことを何度も繰り返してつくるのですが、以前のブログにこの方法について詳しく書きましたので、興味のある方は是非読んでみてくださいね。

piconoglass.hatenablog.com

 

 

 

そうしてできたものが、こちら

 

 

光の小石のようなガラス

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淡い色合いのガラスたち
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一粒ずつよく見ると白くモヤがかかっているのが美しい
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動画で見るとこんな感じ


ランプシェードのアクセントパーツ

 

 

ハープの音をイメージしています
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この2種類のパーツをつかって、ランプシェードに仕立てていくのですが、かなり長くなってしまったので、今回はここまで!

 

 

次回の後編をお楽しみに☆〜(ゝ。∂)

 

 

 

 

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